最近インバウンド観光や越境ECに取り組む企業が増えて、外国語のウェブサイトやアプリを運営する会社が増えてきています。
現地語でゼロからウェブサイトやアプリをつくるよりは、日本語で作ってからローカライズする会社が多いです。
ローカライズとは、ある特定の国の人に向けてために作られたサービスや商品を、他の国の人を対象にして作りなおすことです。
ただ翻訳するだけではなくて、現地の人のニーズにあわせて、機能を追加変更したり、補足説明を入れたりします。
日本語のサービスを外国向けにローカライズすることもあれば、逆に海外のサービスを日本向けにすることもあります。
本日はWebサイトのローカライズの対応で気をつけるべきポイントをまとめています。
目次
アピールするポイントは同じでよいか?
日本語のサイトと同じところをアピールするのだと、外国人には伝わりづらいかもしれません。
特に現地で同じようなカテゴリの商品がまだ一般的でない場合、伝え方を日本と同じにすると現地の人にとってよくわからない商品となってしまいます。
ゼロからその商品カテゴリがどのようなものかを理解してもらうには、日本よりもずっと丁寧に説明する必要があります。
文章のくだけかたは同じにするか
日本人がビジネス向けに書いた文章をそのまま翻訳すると、外国の人にとって堅すぎる印象を与えてしまうかもしれません。
堅い文章は、BtoBの商品の場合などは良いのですが、化粧品や食品や観光地など、一般消費者に向けた文章としては適切でない場合があります。
ターゲットとしている属性の人たちにどういったテンションの文章が好まれるのかを考慮して文体を決めましょう。
ネイティブの同じ性別、世代の人に書いてもらうか、チェックしてもらって感想を聞いてみるのが良いです。
意訳をする必要がある箇所も
日本語は漢字により文字に多くの意味を含めることができるため、ほとんどの言語よりも短い文字数で多くの意味を伝えられる言語です。
そのため、外国語に翻訳するとたいていかなり長くなってしまいます。たとえばサイトエンジンでよく取り組んでいる日本語からタイ語やインドネシア語への翻訳ですと、2倍以上の長さになってしまいます。
ウェブサイト、アプリ、マニュアルなどをローカライズするときにはレイアウトを維持しようとすると、横幅が足りなくなることがあります。
以下のような方法で対応します。
原文を短くする
意訳する
フォントサイズを小さくする
改行する
このうちオススメなのは意訳をすることです。
テキストのサイズや行間は同じでいいのか
テキストのサイズや行間にも注意が必要です。
同じフォントサイズや行間でも、言語によって読みやすさが全然違ってきます。
文字の複雑さによって、文字が潰れたように見えてしまうことが増えて読みやすさが変わります。
英語で書かれた文章と、漢字が多用された日本語の文章では、英語の文章のほうが文字のサイズが小さくても視認性は高くなります。
タイ語のように文字の上下に声調記号が書かれる言語の場合、文字の縦幅が他の言語よりも長くなりやすく、行間が狭いと1行目の下側に書かれた声調記号と、2行目の上側に書かれた声調記号が重なってしまって正しく読めなくなってしまうこともあります。
Webサイトのローカライズでは、言語ごとにCSSで文字サイズや行間の設定を切り替えることができます。
ブラウザ言語設定やIPアドレスで勝手にリダイレクトしない
ブラウザの言語設定や、アクセス元のIPアドレスの地域で自動的に言語を切り替えるようにリダイレクトする仕様になっているサイトがありますが、基本的に推奨できません。
なぜかというと、閲覧者が母語としている言語ではない言語に自動的にリダイレクトされてしまうといったことが発生しうるからです。
もし海外に旅行している途中で、日本語のサイトで調べようと思ってアクセスしてみたら、勝手に英語のサイトに切り替えられてしまったら面倒ですよね。
また、日本人はブラウザの言語設定を基本的に日本語にしているのに対して、海外の人は母国語が英語でないのにブラウザの言語設定を英語にしている人がけっこうな割合でいます。そのため、ブラウザの言語設定が英語になっているからといって、勝手に英語のサイトに切り替えてしまうと、不便に思われてしまうことがあります。
翻訳の品質
翻訳の品質は非常に重要です。
たまに間違いだらけの日本語が使われた看板やパンフレットなどを旅先で見かけますが、あれと同じような気持ちをユーザーに感じさせることになります。
たとえばウェブサイトでは間違いが残ったままだと、途中で読むのをやめる人が増えてしまって、成果につながりづらいサイトになってしまいます。
せっかくサイトを見に来てくれたユーザーに、翻訳の品質のせいで変なサイトだと思われて離脱してしまうと、機会損失になっています。
機械翻訳はできるだけ採用しないようにしましょう。
英語や中国語などと日本語の機械翻訳であれば、ある程度意味が通じますので、どうしても必要な場合は検討の余地があります。ただ、タイ語、インドネシア語、ベトナム語などの途上国の言語と日本語の組み合わせの機械翻訳は、品質が非常に低いのでとても使い物になりません。
また、Googleも自動翻訳はスパムとみなす可能性があるとして推奨していません。
もし機械翻訳を使う場合には、Googleにそのページを認識させないような設定が必要です。これを「Googleにページをインデックスをさせない」と表現してます。
参照: Google ウェブマスター向け公式ブログ: 多言語ウェブサイトの作成について
作業工数を減らす方法はないか
翻訳会社ではワードあたり、文字あたりいくらで見積もりしていることが多いです。
つまり、共通部分を事前に把握しておいて、依頼するときにそれがわかるようにしておけば、同じ文章を2回翻訳するようなことがなくなり、料金を抑えることができます。
また、ある程度規模の大きいプロジェクトになる場合には、翻訳メモリを使うのも有効です。
翻訳メモリとは、過去に翻訳した原文と訳文を保存しておいて、同じ文章や似た文章が出てきたときに、過去の訳文を参照できるという仕組みです。
翻訳メモリの有名なツールとしてはSDL TradosやMemsourceなどがあります。
対象とする範囲は広すぎないか
いきなりすべての原稿を翻訳しようとすると費用が大きくなりすぎます。
大きな工数や外注費を使ってすべて翻訳してみて、全然人に見てもらえないサイトになってしまったはすごくもったいないです。
ある程度規模の大きなサイトであれば、最初は一部だけをローカライズする前提で考えることをおすすめします。
予算をほとんど確保できないという場合であれば、1ページだけをきちんとローカライズして、そのページに広告で集客してみて反応を見るのも良いと思います。
原文を確定させないうちに始めない
スケジュールの都合でどうしても原文を完成しないまま見切り発車でローカライズを開始してしまうこともあるかもしれませんが、できるだけ避けたほうがよいです。
あとから原文が変更になったり追加されたりすると無駄な手戻りが発生します。
ちょっとした変更のように思えても、同じ単語が何度も使われていたりすると、用語の統一が必要になったりして大きな手間になります。
図やイラストなどの元データがあるか
図やイラストなどで日本語の文字がアウトライン化されていない状態の元データがあるかどうかで手間が変わってきます。
文字データとして残っていれば、その部分を編集するだけで済みますが、図と文字が一体化してしまっているようなデータしかない場合は余計な手間が発生します。
フォントが想定したユーザーにあったものになっているか
真面目な感じを与えるフォント、ポップでかわいい印象を与えるフォントなどを状況によって使い分けるようにしましょう。ネイティブに適切なフォントを選んでもらうことをおすすめします。
たとえばLINEのスタンプのローカライズの仕事などがわかりやすいですが、同じ単語で翻訳したとしても、フォントの選び方で全然印象が変わってきます。
ソフトウェアのバージョンは同じか
イラストレーターやフォトショップなどで画像の加工やDTPの業務を行うときにたまに発生するのですが、ソフトウェアのバージョンが違うことで少しデータが変わってしまうということがあります。
気が付きづらいちょっとした違いが発生してしまうことがあるので、できるだけバージョンが同じファイル形式で編集するようにしたほうがよいです。
確認する人のパソコンにフォントが入っているか
言語もしくはフォントによって、パソコンで文字が正常に表示されない場合があります。
これはパソコンにデフォルトでインストールされていないフォントが使われていることが原因です。
特にミャンマー語などの普段日本人は通常使わない言語にローカライズするときには、環境を用意しないと正常に閲覧できないことがあります。
画像もしくはPDFファイルなどにすればとりあえずの閲覧はできますが、継続的に発生するようであれば言語やフォントを入れておきましょう。
単位は不自然でないか
一見翻訳は自然な形でされているように見えても、単位や表記の仕方が国によって違うので注意が必要です。
たとえば、日付を表す表記は、日本語だと年/月/日の順番ですが、外国だと日/月/年だったり、月/日/年だったりします。
また年数を表すときにタイ語だと仏暦が使われることがあり、タイ語がわからない人が見ると間違いかのように見えるのですが、実はそちらのほうがネイティブにとっては自然というような表現もあります。
他には長さや重さを表すフィートやポンドなどの単位など、日本人からすると馴染みの薄い単位のほうが現地の人には伝わりやすいということもあります。
専門用語の翻訳の仕方は適切か
専門用語が多用されているサイトのローカライズの場合は、都度対訳の選択が本当に正しいのかを確認します。
特に日本語でカタカナ表記されているような外来語の場合は、現地でどのように翻訳されているのかをチェックする必要があります。英語の場合はそのまま英語にすればいいのですが、他の言語の場合は英語表記、発音で訳す、意味で訳すなどの選択肢があります。一般的に使われている方法を採用する必要があります。
言語切替のリンクは目立たせる
せっかく複数言語にローカライズしたのに、どのように言語を切り替えれば良いのかをユーザーが理解できずに使ってもらえないという状態は非常にもったいないです。かならず言語切替のリンクがすぐにわかるようにしてください。
よく国旗だけで言語の切り替えのリンクを作っているサイトがありますが、言語名をテキストで書いたほうがわかりやすいです。
また、言語切替のリンクの表記を英語で統一しているサイトが多いですが、切り替える先の言語で表記されていたほうが視認性が高いのでおすすめです。たとえば、英語のサイトの言語切替では、「Japanese」と書いてあるよりも、「日本語」と表記されていたほうがすぐにリンクを見つけることができます。
複数の言語を併記しない
たまに見かけるのが、日本語のすぐ下に英語の訳文が書かれているといったように複数の言語が1つのページに表示されてしまっているケースです。
ウェブサイトだけではなく観光地などのパンフレットでもたまにあります。
英語、中国語、韓国語などがすべて同じ欄に掲載されていたりします。この状態では、どの国籍の人が読んでもテキストの半分以上が無駄なスペースとなります。
言語の併記をやると誰に読んでもらいたいのかがよくわからないページになります。
併記する意味が特にないですし、閲覧者からすると読みづらいです。
実際にウェブサイトの成約率が大きく下がります。ボタンのちょっとしたサイズや色ですら大きく下がる要因になりえますので、半分が他の言語で書かれたページの結果がどうなるかは明らかです。
また、Googleも推奨していません。
同じページに情報を併記するのは、言語数によらずやめたほうがいいです。1ページ1言語を徹底してください。
URLを言語ごとに分ける
URLは必ず言語別に分けてページを作ります。
もしURLを切り替えずに、すべての言語のページを1つのURLで表示してしまうと、Googleから1つの言語でしか集客しかできなくなってしまいます。
多言語サイトのSEOについて以下の記事でまとめていますので、より詳しく知りたい方はあわせてご覧ください。
グローバルSEOで失敗しないための多言語サイト構築の注意点まとめ
ネイティブの視点を入れる
必ずネイティブの視点を入れてチェックすることが大切です。翻訳の品質もそうですが、伝え方が適切か、タブーとされているような表現がないかなどを確認してもらってください。
この記事を書いた人
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1985年生まれ。2007年早稲田大学理工学部経営システム工学科卒業。
2008年サイトエンジン株式会社を設立しました。
学生時代にSEOを販売する代理店でテレアポと営業のアルバイトを始めたところからデジタルマーケティングの仕事に携わり続けています。
オウンドメディアの構築時の戦略立案や運用などを担当しています。
サイトエンジンではコンテンツマーケティングを中心に新規のリードを獲得し続け、累計800社以上とお取引させていただいています。
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