
同じ「東南アジア」という括りでも、国境を越えれば別世界。カンボジアとベトナムなど隣同士の国でも、言葉はもちろん文字も、人々の性格も行動パターンも全く違っています。
今回は、東南アジア各国において、人々が普段インターネット上でどのWebサイトを最もよく見ているのかをチェックしました。
東南アジア基本情報
本題に入る前に基本情報として、ASEAN加盟10カ国の「人口」「インターネット利用率(対人口比)」の推移を比較したグラフを掲載しておきます。Googleが世界銀行のデータを出典としてグラフ化しているもので、グラフの右端が2014年のデータになっています。
東南アジア諸国の人口比較

(参照元:世界銀行)
ほとんどの国において、人口が右肩上がりで伸びているのが分かります。数ではインドネシアが圧倒的に多く、約2億5000万人。ここ10数年でフィリピンはベトナムを抜き、1億人近くまで人口が増えています。ブルネイはマレーシア領に囲まれたとても小さな国なので、人口は40万人くらいしかいません。
東南アジア諸国のインターネット利用率比較

(参照元:世界銀行)
シンガポール・ブルネイ・マレーシアなど生活水準の比較的高い国では、インターネットの普及率も高いことが分かります。グラフの一番下に入っているミャンマーでは2014年でも2.1%。筆者は先日ミャンマーのヤンゴンに5日間滞在していましたが、滞在中毎日停電が起きていました。ただ、とても穏やかで人々も温かい街です。
本記事での対象7カ国(アルファベット順)
本記事では10カ国のうち、Alexa上にデータが掲載されていなかったラオス・ブルネイ・ミャンマーを除いた上記7カ国の情報をまとめました。
※国名をクリックすると、ページ内の該当部分に飛びます。
補足1:ランキング順位について
本記事での順位は、2015年12月27日時点でAlexaに掲載されているものを掲載しています。過去1ヶ月間、日毎の訪問数とページビュー数の平均を組み合わせて計算し、「Alexaトラフィックランキング」として順位付けをしているそうです。結果には、Google・Facebookなど海外発のWebサイトも含まれます。
補足2:Alexa以外のランキングについて
本記事はAlexaの順位を掲載していますが、Similar Webも同様のランキングを掲載しています。結構順位が異なっているので、興味のある方は見比べてみてください。
カンボジア

基本情報
- 人口:1532万人(2014年)
- インターネット利用率:9%(2014年)
- 1人あたりGDP(名目値: 米ドル表示):1,090.12ドル(2014年)
(参照元:世界銀行)
過去1ヶ月で最も見られていたWebサイトTop10
| 順位 | Webサイト | カテゴリ |
|---|---|---|
| 1 | Facebook.com | SNS |
| 2 | Google.com | 検索 |
| 3 | Youtube.com | 動画共有 |
| 4 | Sabay.com.kh | ニュース |
| 5 | Google.com.kh | 検索 |
| 6 | Khmerload.com | 情報・エンタメ |
| 7 | Yahoo.com | 検索 |
| 8 | Blogspot.com | ブログ |
| 9 | Mungkulkar.com | 情報・エンタメ |
| 10 | Freshnewsasia.com | ニュース |
(参照元:Alexa)
カンボジアでは検索を抜いてFacebookが1位という結果に。若者世代は特に、四六時中Facebookをチェックしているのだとか。
4位のSabayは、ローカルのニュースサイト。ニュースサイトでもエンタメ系のトピックが多い印象を受けました。ちなみに、ローカルのサイトはエンタメ系のメディアがほとんどです。
インドネシア

基本情報
- 人口:2億5445万人(2014年)
- インターネット利用率:17.14%(2014年)
- 1人あたりGDP(名目値: 米ドル表示):3,491.93ドル(2014年)
(参照元:世界銀行)
過去1ヶ月で最も見られていたWebサイトTop10
| 順位 | Webサイト | カテゴリ |
|---|---|---|
| 1 | Google.com | 検索 |
| 2 | Google.co.id | 検索 |
| 3 | Facebook.com | SNS |
| 4 | Youtube.com | 動画共有 |
| 5 | Yahoo.com | 検索 |
| 6 | Detik.com | ニュース |
| 7 | Liputan6.com | ニュース |
| 8 | Kaskus.co.id | コミュニティ・Eコマース |
| 9 | Kompas.com | ニュース |
| 10 | Bukalapak.com | Eコマース |
(参照元:Alexa)
インドネシアではGoogleがトップ。ニュースサイトはカンボジア同様、ローカルのメディアが占めています。日本人が日本語のメディアを読むのと同じですね。
8位にある「インドネシアNo.1のオンラインコミュニティサイト」Kaskusが、とてもユニーク。コミュニティサイトとしてはもちろん、オークションなどC2CのEコマースの中では圧倒的な人気を誇っているそうです。
マレーシア

基本情報
- 人口:2990万人(2014年)
- インターネット利用率:67.5%(2014年)
- 1人あたりGDP(名目値: 米ドル表示):10,933.49ドル(2014年)
(参照元:世界銀行)
過去1ヶ月で最も見られていたWebサイトTop10
| 順位 | Webサイト | カテゴリ |
|---|---|---|
| 1 | Google.com | 検索 |
| 2 | Facebook.com | SNS |
| 3 | Youtube.com | 動画共有 |
| 4 | Yahoo.com | 検索 |
| 5 | Google.com.my | マレーシア |
| 6 | Blogspot.my | ブログ |
| 7 | Lazada.com.my | Eコマース |
| 8 | Maybank2u.com.my | ファイナンス |
| 9 | Wikipedia.org | 情報 |
| 10 | Live.com | 検索 |
(参照元:Alexa)
マレーシアは、トップ5まではインドネシアとほとんど同じ結果となりました。珍しく感じるのが8位の「メイバンクトゥーユー」。2009年頃から既に「マレーシアのTopローカルWebサイト」として君臨しており、月間300万人近くのユーザーが訪問しているそうです。マレーシア最大手の銀行MaybankのWebサイトがローカルのTopなのは、少し意外な気もしますね。
フィリピン

基本情報
- 人口:9913万人(2014年)
- インターネット利用率:39.69%(2014年)
- 1人あたりGDP(名目値: 米ドル表示):2,870.54ドル(2014年)
(参照元:世界銀行)
過去1ヶ月で最も見られていたWebサイトTop10
| 順位 | Webサイト | カテゴリ |
|---|---|---|
| 1 | Facebook.com | SNS |
| 2 | Google.com.ph | 検索 |
| 3 | Google.com | 検索 |
| 4 | Youtube.com | 動画共有 |
| 5 | Yahoo.com | 検索 |
| 6 | Abs-cbnnews.com | ニュース |
| 7 | Gmanetwork.com | 情報・エンタメ |
| 8 | Lazada.com.ph | Eコマース |
| 9 | Abs-cbn.com | ニュース |
| 10 | Inquirer.net | ニュース |
(参照元:Alexa)
フィリピンはカンボジア同様、Facebookが堂々の一位。筆者は2年以上フィリピンに滞在していましたが、中毒のように1日3〜4時間Facebookを眺めている人は本当にいます。こちらのランキングにはありませんが、Instagramも人気で、多くのFacebookポストがInstagram経由で投稿されています。EコマースのLazadaはマレーシア・フィリピンの両国でトップ10に入っています。
フィリピンでは英語が準公用語なだけあって、Inquire.netなどニュースサイトも英語がメインです。マレーシアやシンガポールでも、ローカルサイトであっても英語サイトが多い傾向にありました。
シンガポール

基本情報
- 人口:547万人(2014年)
- インターネット利用率:82%(2014年)
- 1人あたりGDP(名目値: 米ドル表示):56,286.8ドル(2014年)
(参照元:世界銀行)
過去1ヶ月で最も見られていたWebサイトTop10
| 順位 | Webサイト | カテゴリ |
|---|---|---|
| 1 | Google.com.sg | 検索 |
| 2 | Google.com | 検索 |
| 3 | Facebook.com | SNS |
| 4 | Youtube.com | 動画共有 |
| 5 | Yahoo.com | 検索 |
| 6 | Amazon.com | Eコマース |
| 7 | Wikipedia.org | 情報 |
| 8 | Live.com | 検索 |
| 9 | Qoo10.sg | Eコマース |
| 10 | Linkedin.com | SNS |
(参照元:Alexa)
シンガポールも上位5位まではインドネシア・マレーシアと似た結果になりました。
Eコマースもここ数年で人気が出始めています。9位に入っているQoo10は、シンガポール向けのEコマースサイトですが、アミューズメントパークの安売りチケットなんかも売られています。ちなみに、シンガポールではAmazon.comでUS$125以上購入すると配送料が無料だそうです。(購入品の内容や大きさにもよる。メキシコではUS$65以上。)10位にLinkedinが入っているのも、シンガポールらしいですね。
タイ

基本情報
- 人口:6772万人(2014年)
- インターネット利用率:34.89%(2014年)
- 1人あたりGDP(名目値: 米ドル表示):5,519.36ドル(2014年)
(参照元:世界銀行)
過去1ヶ月で最も見られていたWebサイトTop10
| 順位 | Webサイト | カテゴリ |
|---|---|---|
| 1 | Google.co.th | 検索 |
| 2 | Facebook.com | SNS |
| 3 | Google.com | 検索 |
| 4 | Youtube.com | 動画共有 |
| 5 | Pantip.com | コミュニティ・掲示板 |
| 6 | Ebay.com | オークション |
| 7 | Yahoo.com | 検索 |
| 8 | Amazon.com | Eコマース |
| 9 | Live.com | 検索 |
| 10 | Blogspot.com | ブログ |
(参照元:Alexa)
タイではPantip.comという掲示板・コミュニティサイトが人気です。話題作りや情報収集に活用しているのだとか。完全タイ語、ローカル向けのサイトです。Ebayはタイ語のWebサイトもあるのですが、Export側(売る人側)のサイトになっています。
ベトナム

基本情報
- 人口:9073万人(2014年)
- インターネット利用率:48.31%(2014年)
- 1人あたりGDP(名目値: 米ドル表示):2,052.29ドル(2014年)
(参照元:世界銀行)
過去1ヶ月で最も見られていたWebサイトTop10
| 順位 | Webサイト | カテゴリ |
|---|---|---|
| 1 | Coccoc.com | 検索 |
| 2 | Google.com | 検索 |
| 3 | Facebook.com | SNS |
| 4 | Blogtamsu.vn | ブログ |
| 5 | Youtube.com | 動画共有 |
| 6 | Google.com.vn | 検索 |
| 7 | Vnexpress.net | ニュース |
| 8 | Zing.vn | ニュース |
| 9 | Doisongphapluat.com | ニュース |
| 10 | Bongda60.com | 情報・エンタメ |
(参照元:Alexa)
ここまで検索においてはGoogleが圧倒的でしたが、状況が異なるのがベトナム。Alexaのランキングでは1位になっている「Cốc Cốc」はベトナムに特化しているブラウザ・検索エンジン。入力機能など、ベトナム語に徹底的に合わせたローカライズをしています。
ブラウザとしては、2013年にリリースしてわずか1年半でFirefoxを抜き、国内2位のブラウザと呼ばれるまでに成長しています。
最後に
以上、Alexaの調査に基づいた「東南アジア7カ国で見られているWebサイトTop10」でした。
冒頭でも記述しましたが、Alexaのほか、競合調査やWebサイト調査で使われているSimilarWebでも、「Top50sites」を国ごとに見ることができ、今回調査した7カ国中6カ国の結果を見ることができます。
Similar Webの方は順位付けの基準が明らかにされていませんが、両サイトでランキングの順位や内容が結構異なります。(例えば、ベトナムの1位はGoogleで、CocCocは10位となっています。)
どちらの情報がより正確かは、データの集め方やランキングの基準にもよるかと思います。Alexaの方が老舗ですが、筆者が2年半住んでいたフィリピンの結果を見る限りでは、Similar Webの方が「よく利用しているWebサイト」の肌感覚に近いかもしれません。
ソーシャルやエンタメ好きのカンボジア、ビジネス色の強いシンガポールなど、それぞれの国の個性やカルチャーが出ていて面白いですね。東南アジアに興味がある方のご参考になれば幸いです。
この記事を書いた人
- 1988年生まれ、香川県出身。東京大学法学部を卒業後、2013年よりフィリピン・セブ島の語学学校「NexSeed(ネクシード)」の立ち上げに参画、サービスマネジメントとマーケティング全般を担当。













