外国語のサイトを運営するときに日本にあるサーバーに設置していませんか?
インバウンドや越境ECの盛り上がりによって、非常に多くの会社がウェブサイトを多言語で運営するようになってきています。
サイトエンジンでは、シンガポール、タイ、インドネシア、アメリカ、イギリスなどのデータセンターにサーバーを設置しています。
この記事では、海外のサーバーを使う理由と、逆にどのようなデメリットがあるかをあわせて紹介します。
目次
なぜ外国語のサイトを運営するときには海外のサーバーを使うべきなのか?
外国語のサイトを運営するときに、日本にサーバーを置くと実は大きな機会損失になっている可能性があります。具体的には以下のようなデメリットがあります。
- サイトの表示が遅くなる
- すぐ見るのをやめる人が増える。直帰率が高まる
- ページビューが減る
- 顧客満足度が下がる
- 検索エンジンでの順位が下がる
- 売上が減る
順番にどんな減少が発生するのかを説明します。
サイトの表示が遅くなる
外国のサイトにアクセスしたときに遅いなと感じたことはありませんか?
それは日本からアメリカなどの距離が離れている国のサーバーにアクセスしているためです。
アメリカ国内にいる状態で、アメリカのサーバーにアクセスすれば、遅延は発生しません。
アクセスする人とサーバーを置いてある場所の距離が離れるほど遅くなります。
日本にあるサーバーにウェブサイトを置いておくと、外国からアクセスされたときには、基本的に海底ケーブルを通じてデータが送られることになります。
データは光の速さより早く伝達できませんので、距離が長いほどデータの読み取りが遅くなります。
また、途中で伝送装置やルーターなどを経由することになりますので、その数が多くなることによっても少しずつ遅延します。
1つのファイルを送受信するだけなら大した遅れにはならないです。
ウェブサイトは1つのHTMLを読み込み、そこに書かれている画像やCSSファイルなどを順番に読み込むといった流れになっていて、しかもブラウザは同時にダウンロードするファイル数が制限されていますので、ファイル数が多ければ多いほど遅延が多くなります。
アクセスしたユーザーのいる地域と、サーバーのある地域との距離でサイトの表示速度が決まっています。
これはケーブルの距離によるため、物理的な直線距離と必ずしも比例しているわけではありません。
直線距離にすると近くても、ケーブルが他国を経由したりしていると、経由してケーブルが長くなった分だけ速度が遅くなります。
すぐに見るのをやめる人が増える
表示速度が遅いとそれをストレスに感じて、ページが開ききらないうちに見るのをやめてしまう人が一定の割合で出てきます。
これによってページを1ページしか見ないで離脱してしまう人の率(直帰率)が高まります。
1ページしか見ない人の比率が高いことが必ずしも悪いことではないのですが、何か購入してもらったり、申し込みをしてもらったりする前提のサイトであれば、何ページか見てもらえるほうが結果に繋がりやすいです。
せっかくコストをかけて集客したのに、サイトをきちんと見てもらえないというのは大きな機会損失です。
広告費をかけて集客しているのにサイトの表示速度が極端に遅い状態は、穴のあいたバケツに水を貯めようとするような無駄が発生しているといえます。
ページビューが減る
直帰率が高くなるので、つまりページビューが減ります。
2006年にGoogleの副社長のメリッサメイヤーが発表したデータによると、Googleの検索結果の表示が0.5秒遅くなっただけで、検索回数が20%も減少したそうです。
あくまでもGoogle1つだけの例ですが、0.5秒で20%も落ちるということは、1秒以上遅延すればその影響は甚大なものになることが予測できます。
顧客満足度が下がる
ページの表示速度が1秒遅くなるだけで、顧客満足度は16%減少するという調査データがあります。
また、成約数は7%減少するそうです。また、ページビューは11%減ります。
メニューやボタンをクリックしてから次のページが表示されるまでにラグが発生すると、
使いづらいという印象を与えてしまって、結果として上記のような指標が悪化してしまうのでしょう。
データ出典
http://www.mcrinc.com/Documents/Newsletters/201110_why_web_performance_matters.pdf#page=3(英語)
検索エンジンでの順位が上がりづらくなる
Googleはページの表示速度を順位決定のアルゴリズムの中に組み込んでいると公表しています。
表示速度が早いサイトの順位は優遇されます。
つまり表示が遅いサイトは相対的に順位が下がるということです。
表示速度が早ければ、ユーザーが目的の情報を見つけるまでにかかるストレスが減るためです。
表示速度が遅いサイトはユーザーにストレスをかける、つまりユーザーの満足度を下げます。
ユーザーが満足しないサイトばかりが上位に表示されていると、結果としてGoogle検索の満足度も下げることになります。
ユーザーの満足度を上げて検索の利用頻度を高めてもらうことが、Googleの利益に直結しますので、表示が早いサイトを優遇したほうがよいということです。
Googleは表示速度をチェックできるPageSpeed Insightsという無料ツールを提供しています。
使い方は簡単で、あなたの運営しているサイトのURLを入れるだけです。
https://developers.google.com/speed/pagespeed/insights/
以下はこのブログのURLをPageSpeed Insightsに入れたものですが、このようにスコアと問題点が表示されます。
売上が下がる
表示が遅延することでユーザーにストレスがかかると、それによって直帰率、ページビュー、顧客満足度、成約数、検索エンジンでの順位などが悪化します。
これらの指標が悪化すると、サイトでの売上が下がります。
アマゾンの調査によると、ページの反応が0.1秒遅くなると、売上が0.1%落ちるそうです。
1秒遅くなると1%も売上が減ってしまうので影響が大きいことがわかります。
データ出典
http://highscalability.com/latency-everywhere-and-it-costs-you-sales-how-crush-it(英語)
気がつきにくい機会損失がたくさん
これまで説明してきたとおり、外国人向けのサイトを日本にあるレンタルサーバーに設置することによるデメリットはたくさんあります。
海外の現地サーバーと比較してみないと気がつくことができない機会損失の要因ばかりですので、知らないうちに大きな無駄が発生してしまいます。
一度日本国内にサーバーを設置してしまうと、あとから海外にサーバーを移動させるのに手間がかかりますので、できるだけ最初から海外で借りたほうがよいです。
海外サーバのデメリット
これまでの説明でさまざまな理由から外国語でサイトを運営するときには、対象とする国にあるサーバーに切り替えたほうがいいと説明してきましたが、当然デメリットもあります。
以下どのような問題点があるかをまとめています。
費用が追加でかかる
日本語のサイトを入れてあるサーバーと同じサーバーを使えば、特に追加料金なく外国語サイトの運営ができます。
海外にあるサーバーを別で借りれば当然追加で料金がかかります。
また、言語ごとのサイトをそれぞれの国にあるサーバーに別々に入れれば、費用が国ごとに積み上がっていくので高額になります。
日本はインフラが充実していて、かつサーバー提供会社が多いためか、物価の割にサーバーの価格が安いです。
海外だと、データセンターやサーバー会社が少ないせいか、物価は日本よりはるかに安いのに、サーバーは日本より高いといったことがよくあります。
多言語の場合に管理が煩雑になる
国ごとにサーバーを置くとなると、それぞれ契約や保守が必要になり、管理が煩雑になります。
各言語のキャッチコピーや画像などを1箇所更新するにしても、それぞれのサーバーに別々にアップロードする必要が発生して、手間が増えます。
たとえば、日本語、英語、中国語簡体字・繁体字、韓国語と5つの言語で運営されているサイトは多いですが、これだけでも各国にサーバーを設置するとなると、それだけで結構な時間をとられてしまいます。
妥協案としては、複数のアジア言語でサイトを運営するときに、シンガポールにサーバーを置いてまとめて管理するといった方法があります。
また、海外にコンテンツを効率的に配信するためのCDN(コンテンツデリバリネットワーク)というサービスもあります。
CDNとは、海外に同じ内容を同期させたエッジサーバーというものを各国に設置しておいて、アクセスしたユーザーがいる場所にもっとも近い地域にあるエッジサーバーから配信されるという仕組みです。
CDNはそれなりにコストがかかるので、規模の大きなサイト向きの施策です。
サポートが英語、現地語になる
海外のサーバーを借りると、基本的にサポートが英語もしくは現地語になります。
通訳者が社内にいれば現地語で問い合わせすることもできますが、
基本いない国のほうが多いため、サーバーにトラブルが発生したときに、連絡のやり取りは英語になります。
メールやチャットなら辞書を引きながらなんとかなります。
ただ、緊急時の電話でのやり取りとなると、自分の英語ヒアリング力が低いこともあり、相手によっては意思疎通に支障をきたします。
普段英語ネイティブでない人と話すことに慣れているシンガポールの会社などはある程度考慮してくれるのですが、アメリカの会社のカスタマーサポートの人の英語はこちらが英語が下手なことを考慮してくれないので注意が必要です。
契約や利用規約なども基本英語です。
日本語でカスタマーサポートの対応をしてくれるところもありますが、どうしてもその分はコストに跳ね返ってきて、ほかのローカルサーバー会社よりは値段が高くなります。
法律や規制が違う
どのような行為やコンテンツの掲載が禁止されているかは国や会社によって違いますから確認が必要です。
法律は現地のものが適用されます。
サイトの種類によっては、許認可や届け出が必要な場合もありますから気をつけてください。
禁止されているコンテンツも国によって違います。
たとえば、お酒、薬事、政治、宗教、アダルト、ギャンブルなどに関連したものは事前に調べたほうがよいでしょう。
たとえば、タイではECサイトを運営するのに商務省への届け出が必要です。
また、王様を批判するようなサイトは不敬罪で逮捕の対象になります。
時差がある
サーバーの設定に時差があったり、営業時間が現地時間だったりで注意が必要です。
日本時間のつもりでサーバーに予約した挙動が、現地時間に行われてしまうなんてことがないように気をつけましょう。
設定の問題は気をつければ済みますが、サーバー管理会社の営業時間の時差は大きな問題になることがあります。
シンガポールやタイなどの比較的時差が少ないところであれば緊急対応のための連絡をすればすぐに返事が返ってきます。
一方で、アメリカやイギリスなどで借りているサーバーだと、時差が大きくて翌日になるまで返事がないなんてこともありえます。
サーバーが落ちてしまったタイミングでアメリカはすでに深夜で営業時間外ということになると、復旧するのがアメリカの翌日の朝になってしまうことがあります。
24時間サポート対応してくれるサーバー会社がほとんどですが、深夜対応のために待機している人がエンジニアでなく、ただエンジニアにユーザーの要望を伝達するだけの人だったりすると、翌日エンジニアが出社してくるまで待たなくてはいけません。
一度データセンター側の障害で非常に影響範囲の大きな問題が発生し、あまりにも深刻な事態なのにサポートに連絡しても解決の兆しが見えなかったために、LinkedInというアメリカでよく使われているビジネス向けSNSで、そのサーバー会社のCEOやCOOを探して連絡して、問題をすぐに解決してもらったこともありました。
営業時間外はエンジニア不在で、カスタマーサポートしかいないサーバー会社には注意が必要です。
状況や修正方法がわかっていない担当者複数人にたらい回しにされることがあります。
支払いが外貨で為替リスクがある
支払いが日本円でなく、現地の通貨になりますので、為替の変動によって支払い金額が変わってきます。
レンタルサーバーは基本的に長期間利用する性質のものですので、為替の変動幅が大きくなることがあり、注意が必要です。
たとえば数年前に1ドル80円程度の時に借りたサーバーが、現在では1ドル100円を超えているため、円ベースでの支払いは25%も上昇していることになります。
このように、数年間という長期間で海外のレンタルサーバーを利用していると、かなり大きな差額が発生してしまうことがあります。
予算配分に注意が必要です。
基本クレジットカードで決済することになりますので、クレジットカード会社が用意したレートが適応されることになります。
PayPalなどの第三者の決済プラットフォームでの支払いに対応している会社もあります。
日系の会社が運営している海外のレンタルサーバーであれば、日本円で価格を提示してくれるところもあるでしょう。
日本円で毎月定額のほうが金額が正確に予測できますし、経理などの手間も少ないです。
信頼できる会社なのかの判断が難しい
日本の会社であれば、ちゃんとした会社なのかは評判や事業規模などから推測しやすいですが、海外のレンタルサーバー会社はまともな会社なのかどうかがわかりづらいです。
突然会社が倒産したとか、データセンター側の人為的な事故などでサーバーを止められてしまったら、サイトの表示はできなくなるし、データの回収もできなくなるしで悲惨なことになります。
定期的にバックアップを取るか、冗長化しておいて1つ止まっても大丈夫なようにするといった対策が必要です。
その点アマゾンが提供しているAWSのような大手が提供する信頼性の高いサービスを使えば安心です。
ただし対応している地域(リージョン)は限られています。
データ転送速度が遅い
FTPで日本からデータをアップロードするときに、日本にあるサーバーよりも時間がかかることが多いです。
別に転送している間に他の作業をしていれば良いだけなので、それほど大きな影響はないですが、大容量のデータを頻繁にアップする場合などにはストレスに感じる方もいらっしゃると思います。
消費税の対象にならない
海外のサーバーを直接海外の会社と契約して利用する場合、料金は日本の消費税の課税対象になりません。
直接自社で借りて運用する場合には、支払いが課税対象外になっていてもそれほど大きなお金の動きは発生しないのですが、
クライアントから日本でサーバー料金を支払ってもらい、海外でサーバーを借りて又貸ししている制作会社さん、サーバー会社さんの場合だと、預かっている消費税の金額が一時的にかなり大きくなります。
あなたの運営サイトにあった選択をしましょう
外国語サイトで海外にあるレンタルサーバーを使うべき理由と、海外サーバーのデメリットについて解説しました。
ありきたりな結論ですが、運営しているサイトの規模感や運営方針によって、いま使っている日本のサーバーに他の言語のページも一緒に入れるか、海外のサーバーを使うかを選ぶことになります。
他の言語のページも含めたアクセスが、現状で数百から数千ページビューくらいで、これから伸ばす予定がないという方は日本にあるサーバーをそのまま使うのでもよいでしょう。
一方で、GoogleアドワーズやFacebook広告などに広告費を使って一気に大量のユーザーを集客するようなサイトは、海外にサーバーを設置したほうがよいです。
サイトの表示速度によって、広告の費用対効果がまったく変わってくるためです。
広告経由のアクセスの成約率が少し上がるだけで、海外サーバーを使うコストを回収できます。
また、広告出していない場合でもアクセスの規模が大きなサイトは海外にサーバー設置したほうがよいと思います。
海外サーバーの選びかた
以下のような要素を比較して海外サーバーを選びましょう。
・サポートの営業時間(時差を考慮してチェックします)
・緊急時の対応体制
・スペックと価格のバランス
・利用しているクライアント企業の実績、事例など
・信頼性(住所やCEOの名前などの記載がちゃんとあるか、実在している会社なのかどうか)
よくある選択肢
以下のようなサービスを利用できます。
AWS(Amazon Web Service アマゾンウェブサービス)
アマゾンが運営しているサービスです。
セキュリティがしっかりしている、初期費用が抑えられる、すぐにはじめられるなどのメリットがあります。
スペックの変更が容易で手間が少ないのも成長していくサイトにとって大きな利点です。
ただ、サーバーの知識がある程度ないと、使いこなせないというデメリットがあります。
検索しながら勉強すれば、サイトを公開するところまではできるとは思います。
また、対応しているリージョン(地域)が限られています。
たとえばアジアだと、東京、ソウル、シンガポール、シドニー、ムンバイです。
運営サイトが対象とする国にAWSが対応していないときには、近くのリージョンを選択して借りることになります。
ローカル企業運営のVPS(Virtual Private Server 仮想専用サーバー)、専用サーバー
ローカル企業が運営するVPSはとても安価に借りられるため、試しにサイトを現地で運用するときにおすすめです。
現地の企業から借りることになるので、AWSで対応していない国にあるサーバーを借りられます。
ただし、はじめて借りるときに、
まともな会社かどうかの判定が難しいです。
障害発生時の対応はどうなるか、
サポートをきちんとしてもらえるかを
事前に確認しておくことをおすすめします。
サイトエンジンでも海外サーバーを取り扱っています
サイトエンジンでは、海外レンタルサーバーをレンタルする事業を行っております。
サーバーを東南アジアの国に設置したいというご要望を多く承っております。
タイやシンガポールをはじめとして、外国にサーバーを置きたい方はいますぐ info@siteengine.co.jp までお気軽にご連絡ください。
海外にクラスCで分散されたIPアドレスを用意しているIP分散サーバーを運営しています。
以下は専用サイトです。
http://classc.net/
この記事を書いた人
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1985年生まれ。2007年早稲田大学理工学部経営システム工学科卒業。
2008年サイトエンジン株式会社を設立しました。
学生時代にSEOを販売する代理店でテレアポと営業のアルバイトを始めたところからデジタルマーケティングの仕事に携わり続けています。
オウンドメディアの構築時の戦略立案や運用などを担当しています。
サイトエンジンではコンテンツマーケティングを中心に新規のリードを獲得し続け、累計800社以上とお取引させていただいています。
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