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注目が高まるASEAN
東南アジア諸国に進出をする日系企業の数・日本人の数が依然として増え続けています。例えば、10年前には日系企業が600社程度しか進出していなかったフィリピンやベトナムでも、2014年10月時点で1,521社(フィリピン)、1,452社(ベトナム)と2倍以上に増えています。※出典:外務省「海外在留邦人数調査統計(平成27年要約版)」
ユニクロや日本の大手コンビニエンスストアなども東南アジア各国で見られるようになり、東南アジアの視察ツアーも頻繁に行われています。東南アジア進出を検討している企業の方や、東南アジア各国を回ってみたい旅行者の方なども多いのではないでしょうか。
東南アジア視察・周遊がさらにしやすく
さて、日本に限らず世界中からの注目が高まっているASEAN諸国ですが、LCC航空会社のAir Asiaが、「ASEAN PASS」という東南アジア周遊用のパッケージを始めたのはご存知でしょうか?簡単に言うと、「18,000円で、東南アジア内で最大10区間の航空券を買える」というものです。ただし空港税などは別でかかります。
私もたまたま年末にASEAN各国を旅して回ることになったのをきっかけに知ったのですが、全てのフライトを別々に押さえるより時間と費用を節約できそうだったので、実際に使ってみました。
とても便利で、上手く行けばフライトの料金を節約できるのですが、いくつか利用前には気付けなかった不便な点や、コツ・注意事項がありました。この記事では、今後利用される方のために使い方と注意事項をまとめています。
※注:この記事はAir Asia社とは一切関連ありません。筆者があくまで個人ユーザーとして利用して感じたメリット・注意事項を中心に書いています。Asean Passの詳しい利用方法やお問い合わせは、Air Asia社までお願いします。
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Asean Passとは?
「Asean Pass」は、航空会社のAir Asiaが2015年初旬に発売を開始した、東南アジア周遊用の航空券パッケージです。ポイント制の仕組みになっていて、「クレジット」をあらかじめ購入し、その後クレジットと引き換えに航空券を予約することができます。
出発の場所と行き先によって、必要なクレジットの数は異なります。例えば、タイのバンコクからベトナムのハノイまでは、1クレジットで行けて、マレーシアのクアラルンプールからラオスのビエンチャンまでであれば、3クレジットが必要です。
また、ASEAN各国の全てのルートを網羅している訳ではありません。当たり前の話ですが、Air Asiaが就航していることが前提となります。ASEAN各国の中では、マレーシアのクアラルンプールとタイのバンコクの発着の便が最も充実していて、ラオスやブルネイ・ミャンマーの発着便は限られています。
※ルートと必要なクレジット数は、詳細ページからチェックできます。
クレジットの種類
クレジットには2種類あり、それぞれ有効期限があります。
- 10クレジット:18,000円(最初の出発日から30日間有効)
- 20クレジット:32,000円(最初の出発日から60日間有効)
すべてのフライトは、出発予定日の14日前までに手配をする必要があります。
Asean Passを実際に使ってみた
2015年12月からの東南アジア周遊に向けて、実際にAsean Passを使ってみました。(現在フィリピン在住のため、フィリピン以外の国を全て訪問予定)
下記、Asean Pass購入方法・利用方法の簡単なまとめです。
Asean Passクレジット購入方法
Aslan Passの公式ページから、 Asean Pass「今すぐ予約」というボタンを押すと、購入の詳細画面に移ります。
- クレジットを購入する通貨
- クレジット数(10クレジットか、20クレジットか)
- 何枚パスを購入するか(1枚の10クレジットパスを2人で分けることは不可)
を決定すると、購入画面に移ります。
決済はクレジットカード(VISA/Master)で行います。JCBカードは不可のようです。
購入後、パスの所有者(パスを利用して搭乗する人の名前)を指定すれば、Asean Pass利用の準備は完了です。
まだフライトを予約していない段階であれば、他の人にパスを譲ることもできます。
Asean Passクレジット利用・引き換え方法
行きたい場所と日時を指定し、都合の合う便を探してクレジットと引き換えていきます。
後述しますが、Asean Passがカバーしているのは航空券そのものの料金のみです。空港税や手荷物料金、アドオンなどは別途料金が必要になり、毎回決済が必要です。
最初のフライトを手配したあとは、初回出発日から30日以内で、残りのフライトを手配していき、クレジットを使いきったら完了です。
Asean Pass10クレジット利用例
筆者のケースでは、Asean Passで取ったフライトは下記6つでした。(計10クレジット)陸路とも併用しながら各国を回っていく予定です。
- ホーチミン⇒バンコク(1クレジット)
- バンコク⇒ヤンゴン(1クレジット)
- ヤンゴン⇒クアラルンプール(3クレジット)
- クアラルンプール⇒シンガポール(1クレジット)
- シンガポール⇒ジャカルタ(1クレジット)
- ブルネイ⇒クアラルンプール(3クレジット)
※カンボジア・ラオスは、陸路で寄ります。
※その他Asean Pass以外で1つフライト(ジャカルタ⇒コタキナバル)を押さえています。
良かった点
行きたいところをある程度Asean Passで繋ぐことができました。空路なので陸路よりも疲れないのはありがたいです。
Air Asiaではクレジットカード決済の場合、毎回追加で700円手数料としてチャージされるのですが、Asean Passではクレジットカード手数料もありませんでした。
また、私の場合10月の初旬にフライトを手配したのですが、クリスマスや年末年始の期間においても、幸いほとんど問題なくフライトが取れました。
Asean Passをオトクに使うためのコツ
Asean Pass購入通貨を、マレーシア・リンギットにする
これは私の失敗談でもあるのですが、私の場合10クレジットを日本円(18,000円)で購入しました。米ドル(160ドル)支払いよりはレートが良く、安心していました。
ところが2015年10月25日現在で見ていると、ローカル通貨であるマレーシア・リンギット(499MYR)であれば、約15,000円弱と、更にお得に購入できるようです。クレジットカードのレートも考慮する必要がありますが、18,000円よりは安く収まりそうですね。
購入時点で通貨とレートをよくチェックしておくと、損なく購入できるかもしれません。
日本からの航空券と同時にAsean Passを購入すると航空券代が10%OFFに
日本からのフライトを予約する際に、Asean Passと同時に予約すると、航空券代が更に10%OFFになるようです。ただし、私は香港からタイに向かうため利用しませんでした。(香港から予約すると、Asean Passの料金が香港ドル料金に切り替わり、かえって料金が上がってしまうため)
Asean Passで不便を感じたところと注意事項
欲しい日時でフライトが取れない
これが最も「賭け」のような部分ですが、Asean Passを購入する前に、フライトに空きがあるかどうかをチェックすることができません。
私の旅程の場合、シンガポールからインドネシアへのフライトが、なかなか空き日が見当たらず苦戦し、最終的に当初の予定よりも4日遅い便に乗ることに決めました。
行き先によっては、数週間Asean Passが使えないなどということもあり得るそうです。旅程は早めに決めておくのが、空席も多くAsean Passを取りやすいと思います。
万が一、Asean Passで取りたいフライトが全く取れない状況になった場合には、フライトを予約せずに他の人に譲るなどした方がよいかもしれません。
結局18,000円では収まらない
既に少し触れてありますが、結局Asean Passが全ての料金をカバーしている訳ではありません。私が利用したフライトでも、空港税だけで追加料金が合計14,000円ほどかかります。
更に手荷物を預ける場合は、20kgまでで1回2,000円〜2,500円ほどかかってしまうため、追加で15,000円ほど見ています。もはやAsean Pass自体の値段とほとんど同じ料金がかかってしまいます。
結局のところ、私の場合6フライトで1人47,000円ほどはかかりそうです。
※逆に言えば、荷物を7キロの手荷物だけに抑えることができれば、32,000円ほどで6フライトが利用できるので、荷物は軽い方が大分オトクになると思います。
元々安いフライトは、オトク度が小さい
これも私の失敗談になります。マレーシアのクアラルンプールから、シンガポールに1クレジットを使いましたが、これはあまりオトクではありませんでした。
後から調べたところ、元々の航空券の値段が1,426円。
Asean Pass10クレジットを18,000円で購入しているため、1クレジットあたり1,800円。
ただし、Air Asiaでは通常決済の際にクレジットカード利用料金が700円ほどかかるので(2015年10月現在)、損をしているという訳ではなさそうです。
何度も同じ場所に行くのはアウト
あくまで周遊用のパッケージのため、同じ場所を何度も往復するのは不可のようです。
2人同時にフライトを予約できない
これが地味にかなり不便だったのですが、私は今回のAsean Pass購入時に、友人分も含め2枚のパスを同時に購入しました。
いざフライトを予約しようとしたところ、2人分のフライトを同時に予約することができないらしく、6フライト分(計12回のトランザクション)を別々に行うことになりました。
受託手荷物が20キロからしか選べない
通常のフライトでは15kgから預け入れ手荷物を選べるのですが、Asean Passでは20kg以上しか選べないようです。現地通貨からの換算になりますが、毎回2,000円〜2,500円ほどは見ておいた方が良いと思います。
まとめ:Asean Passは本当にオトクだったのか
「航空券代金+クレジットカード手数料」で比較すると、20%ほどオトクでした。Air Asiaはクレジットカード手数料が高いので、何回も購入していると案外大きな金額になってきます。
■Asean Pass 10クレジット:18,000円(日本円決済)
■個別に手配した場合の航空券代金+クレジットカード手数料(6回分):22,580円
Asean Passをマレーシア通貨で買ったり、ルートや使い方を工夫することによって、もっとオトクな使い方ができると思います。また、私の場合は渡航先が多かったため陸路と併用することになりましたが、Asean Passだけで東南アジア周遊ルートを作ることもできます。
Asean Passをオススメできるケース
- 東南アジア複数都市の視察や旅行を計画している
- 時間や労力の面で、陸路よりも空路を選びたい
- 旅程をある程度早い段階で確定できそう
- Asean Passが提供するルートと、自分が行きたい場所が合致している
- ある程度旅慣れしている(多少の不便やトラブルに慣れている)
Asean Passをあまりオススメできないケース
- 東南アジア訪問都市の数が少ない
- 旅程に全くフレキシブルになれない(確実に日程が決まっている)
- 旅程を現地で決めたい(14日前までに予約が必要)
- もっとゆっくり滞在したい(10クレジットの場合有効期限は30日のため、少し急ぎ旅になりそうです)
- とにかく最安で行きたい(陸路をもっと使った方が安い可能性があります)
- Asean Passが提供するルートと、自分が行きたい場所が上手く合わない
いかがでしたでしょうか。今後ASEAN各国を視察や周遊する機会がある方の、ご参考になれば幸いです。
この記事を書いた人
- 1988年生まれ、香川県出身。東京大学法学部を卒業後、2013年よりフィリピン・セブ島の語学学校「NexSeed(ネクシード)」の立ち上げに参画、サービスマネジメントとマーケティング全般を担当。